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新国立競技場 現場監督 過労自殺

2017/07/22

新国立競技場の建設工事に関わっていた23歳の新卒男性が今年3月に失踪し、長野県で遺体で見つかった。警察などの調査で、自殺と判断された。
「自殺は仕事が原因」として、両親は上野労働基準監督署に労災認定を申請、代理人の弁護士が7月20日に厚労省で記者会見した。
【2016年12月17日、新国立競技場地盤改良工事に従事することになって以降、極度の長時間労働、深夜勤務、徹夜が続いた。自殺直前の1カ月で、徹夜が3回もあり、夜22時以前に仕事が終わったのは5日だけだったという。

男性は2017年3月2日、突然失踪した。「今日は欠勤する」と会社に連絡があり、それを最後に一切連絡がとれなくなった。誰からの連絡にも応じなくなった。
そして、4月15日に長野県内で遺体が発見された。警察・病院の捜査の結果、「3月2日ごろに自殺」と判断された。

都内で記者会見した川人弁護士によると、工事現場の入退場記録を基に月々の残業時間を調べたところ、過労死ライン(月80時間)を超えており、16年12月が約94時間
▽今年1月が約142時間半▽同2月には約196時間--に達し、2月は徹夜勤務が3回あった。
「身も心も限界な私はこのような結果しか思い浮かびませんでした。家族、友人、会社の方、本当にすみませんでした」と書かれた遺書が遺体の近くに残され、県警から自殺と判断されたという。
母親の証言では、午前4時半に起床し深夜1時ごろの帰宅が多かった。生前、両親に「機械の調子が悪く、日程がタイト(ぎりぎり)だ」と話していたといい、川人氏は
「五輪開催という国家プロジェクトに間に合わせねばという重圧が現場にあった」と指摘した。

男性の勤務先の土木工事会社は毎日新聞の取材に「遺族に対し大変申し訳ない。真摯(しんし)に受け止めている」と答え、元請けの大成建設は「専門工事業者に対し、今後も法令順守の徹底を指導する」との
コメントを出した。【早川健人】
新国立競技場を巡っては、総工費が膨らんだことが批判され15年7月に旧計画が白紙撤回され、本体工事は当初予定から約1年2カ月遅れて16年12月に着工。
発注者である日本スポーツ振興センター(JSC)は事業主体の選定にあたり、工期短縮を求めていた。
20年大会に向けて各競技会場の整備が進む中、川人弁護士は20日、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長宛てに、長時間残業撲滅を求める要請書を提出。
「国家的行事であるからといって、その準備のために労働者の命と健康が犠牲になることは断じてあってはならない」と訴えた。
今後は、東京都の小池百合子知事や丸川珠代五輪担当相、JSC宛てに同様の要請書を出すという。