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国交省/港湾の防災対策強化/有識者会議が初会合、高潮・高波にも対応

2019/11/20

国土交通省は港湾分野の中長期的な防災・減災対策を強化する。これまでの地震・津波対策に加え、発生件数が増加傾向にあり被害規模も大きくなっている台風や高潮、高波への対応を盛り込む。急激に進む気候変動の影響も考慮。ソフト対策を組み合わせながら総合的な対策を確立する。19日に東京都内で有識者会議の初会合を開き、検討を開始した。有識者会議が来夏にもまとめる答申を基に、国交省は施策を打ち出していく。
 同日の交通政策審議会(交政審、国交相の諮問機関)の港湾分科会防災部会(部会長・小林潔司京都大学経営管理大学院特任教授)で今後の検討の方向性を示した。▽頻発する台風への対応▽気候変動に起因する外力強大化への対応▽災害に強い海上交通ネットワーク機能の強化▽早期復旧・復興に向けた港湾の活用-の4テーマを設定。実際の被災事例を踏まえながら対策を議論する。
 昨年の台風21号や今年の台風15、19号では高潮や高波、暴風によって港湾施設も甚大な被害を受けた。台風対応では大型化や進路の変化などを踏まえ、堤防や岸壁などの設計時に基準とする「設計沖波」の見直しを検討する。
 技術的な内容は10月に発足した有識者会議「港湾等に来襲する想定を超えた高潮・高波・暴風対策検討会」(委員長・高山知司京都大学名誉教授)の議論の成果を反映する。
 気候変動による海面水位の上昇など外力の増加を見据えた対策は、護岸の補強やかさ上げなどを想定。地震で陸上交通網がまひした場合に海上交通網が代替機能を果たすため、耐震強化岸壁の整備も検討する。
 ソフト対策は港湾の事業継続計画(BCP)の更新・活用、台風接近時に船舶がいかりを下ろす制限海域の適切な設定などが検討項目になる。初会合では台風19号のさなかに千葉県で地震が発生したケースを取り上げ、災害の同時多発を想定したBCPの必要性が指摘された。
 国交省は過去の大規模地震を教訓に有識者会議が2012年6月にまとめた港湾の地震・津波対応に沿って、防災・減災対策を推進してきた。台風被害の多発や気候変動の影響を考慮し対策を拡充する。
 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が9月に発表した特別報告書によると、今世紀末の世界平均気温が産業革命前より最大5・4度上昇した場合、世界の海面水位は1986~2005年の平均に比べ最大1・1メートル上昇する。高潮は低緯度の多くの沿岸域で、100年に一度に発生する規模の被害が50年になると毎年起こる見込みだ。