全建会員/災害時の緊急対応体制「不足」が26%/除雪も人員不足深刻
災害時の緊急対応を担う地域建設業で十分な体制が維持できていない実態が、全国建設業協会(全建、近藤晴貞会長)の調査で明らかになった。災害時の緊急対応に必要な人員や機材が確保されているかどうかを会員企業に聞いたところ、「体制(能力)が不足している」と回答した企業が3割弱に上った。慢性的な人員不足で「10年後には災害・除雪には対応できない企業が半分近くを占めると予想される」と先行きを危惧する声も寄せられた。
傘下の都道府県建設業協会と会員企業を対象に、改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の運用指針を巡る調査を7~8月に実施。45協会と982社が回答した。2014年度に施行した改正公共工事品確法と運用指針の総括として、調査を開始した15年度時点と現在の比較を行った。6月に改正された公共工事品確法の運用指針作成に当たっての提言・要望活動に生す。
地域の安全・安心を守るために不可欠な人員・機材を維持する上で必要な公共事業量について質問。全体の4割弱が「必要な事業量を下回っている」と回答した。所在地域での災害時の緊急対応は▽十分な体制が確保されている=10%▽必要最低限=64%▽体制(能力)が不足=26%。除雪対応は「十分な体制が確保されている」との回答が9%にとどまり、57%が「必要最低限」、27%は「体制(能力)が不足」と答えた。
災害対応の課題として、「行政側の命令系統が徹底されていない」という指摘や「協力する特典が何かをもっとはっきりさせてもらいたい」といった意見が寄せられた。除雪業務に対し、「オペレーターの高齢化や担い手不足が深刻で、近い将来、人員不足による業務縮小が現実となる可能性がある」との懸念や、「除雪車は冬期間だけの稼働なので維持費が確保できていない。発注者が貸与するようにしてほしい」との要望もあった。
過去3年間に人員・機材を「手放した・縮小した」との回答は15%に達した。手放した要因(複数回答)は「定年などによる自然減」を除くと、「公共事業量の減少」が最も多い。
受注状況は、全体で見ると「変わらない」とする割合が5割弱。「良い」「良くなってきた」とする割合が増加し、「悪い」「悪くなってきた」とする割合が減少している。利益状況も同じ傾向となった。
運用指針に関し、債務負担行為やゼロ債の活用などによる発注時期や完成時期の平準化に向けた取り組みは、都道府県で「以前から行われている」「改善された」と回答した企業の合計は8割超となり、4年前の調査から改善が進んだ。市区町村では5割が「未改善」と回答した。